Taishi Kamiya


Aroma Trace

  • 01 : breathing forest
  • 02 : in the air
  • 03 : touch
  • 04 : perturbation
  • 05 : glimmer
  • 06 : daydreaming

Released by Nomadic Kids Republic
Release/catalogue Number: nkr016
Release date: Jul 26, 2012

All tracks composed and played by Taishi Kamiya
Maxtered by Ian Hawgood
Cover Art by Liam Frankland

track 01, 02, 03 :
Recorded by Mizuyuki Shirai in 2007
track 04 :
Recorded by Mizuyuki Shirai in 2008
track 05 :
Recorded by Monika Sandnesmo in 2011
track 06 :
Recorded by Taishi Kamiya in 2004

Aroma Trace

Taishi Kamiya「Aroma Trace」
全曲紹介

"Aroma Trace"は Taishi Kamiya 通算2枚目のアルバムになります。

1st Album"Spectra of Air"では、ソプラノサックスの音とわずかなフィールド録音の音のみを使用し、ラップトップで加工し楽曲を構成したスタジオ制作作品でしたが、本アルバムでは2004年〜2011年に行われた過去のライブでの演奏を収録した6曲の音源を収録しています。

また、今回収録の楽曲ではサックスだけでなく、1,3曲目はプリプロダクションしたトラックを使っていたり、1, 3, 6曲目ではベースの演奏音を使っていたりと、前作よりもカラフルな印象になっていると思います。ライブならではの空気感や、その音の薫りをわずかでも感じ取って頂ければと思います。

以下にAroma Trace収録曲それぞれについて簡単な解説を用意しましたので、ご覧いただければと思います。

01 : breathing forest
1曲目〜3曲目は、2007年に開催された福嚴寺Fes,でのライブ演奏の録音です。福嚴寺Fes, は僕が企画し毎年秋に浜松の福嚴寺さんで開催しているイベントです。http://windtail.com/fukugonji_fes_2011/ (2012年の開催はありません)
この曲ではバックグラウンドに簡単なドローンとビート音など、いくつかのトラックを使用しています。使用するトラックも基本的にはソプラノサックスとベースの音を元にして作られています。その上にサックスの演奏で旋律と音響的な効果を加えています。曲中通して聴こえている虫の音は、プリプロダクションされたトラック中に入っているフィールド録音で収録した虫の音と、福嚴寺の庭の鈴虫の音色が奇跡的に混ざりあい、演奏と自然の音の境界があいまいな不思議な音になっています。
前半はシンプルなドローンで始まり、サックスの演奏音によって重層的に音が変化していくと共に変則的なビートが入り、中盤〜後半にベースのフレーズが入ってくる構成です。ビートなどは非周期で変化するように作っていて、サックスの加工音も、あえて音が揺らぐように処理を加えているため、曲を通して浮遊感・不安定感がありますが、ベースの音を入れることで曲の輪郭が浮かび出るよう構成されています。
02 : in the air
1st Album "Spectra of Air" にも Air として収録されている曲です。あらためて聴くとアルバムよりもかなりスピードが早いですね。
これは事前に用意するトラックは無しで、主旋律といくつかのフレーズだけ決めて、その場でソプラノサックスの音を重ねて演奏している曲です。この演奏では中盤のエモーショナル感はかなり気に入っています。
中盤に聴こえるノイズはサックスのマウスピースからリードを外した状態で演奏した音で、電子的なノイズに比べ色気のあるノイズになっていると思います。曲の序盤から聴こえてくるベースの旋律は、直前に吹いたサックスのフレーズをその場で加工してベース音として聴こえるようにしているのですが、そのときに吹いた旋律の流れや吹き方によって、(音を加工するソフトウェアの処理の関係で)音の感触が変わっていくので、演奏する度に違う質感になるというのが演奏性があり面白いと感じます。コンピュータが楽器の可能性を拡大してくれている好例だと思います。この音がこのように変わっていくのか、というあたりを味わって楽しんでいただくのも良いと思います。
03 : touch
フィールドレコーディングをフィーチャーした小作品です。フィールド録音とエレクトリックベースの加工音だけで構成しています。
ベースを弾きながらその音色を聴くと包みこまれるようななんとも言えない安心した感覚になります。自然の音に耳を傾けながら目的もなくベースを爪弾くのが僕の大好きな時間です。この曲は、まさにそのような音に包まれながら過ごすリラックスしたときの感覚を、そのまま再現したような子守唄のような楽曲です。
04 : perturbation
2008年の福嚴寺Fes,でのライブ演奏の録音です。
ソプラノサックスの演奏とラップトップだけで行った完全即興演奏です。自分の演奏の中ではかなりアグレッシブな部類に入ると思います。サックスの音をパーカッシブに加工してダイナミックに音を変化させています。サックスの音が時にはビートに、時にはドローンを構成し、時には壮大なオーケストレーションのように、時にはlyricalな旋律にドラマチックに展開をしています。
05 : glimmer
収録されている楽曲の中では一番最近の録音で、2011年に落合soupで行ったライブ演奏の録音になります。この楽曲は実際のライブではもっと長い演奏でしたが、抜粋してモチーフが変化する曲の中間部から収録しています。
この曲もその場で楽器を演奏してその音をラップトップで加工して即興で演奏しています。部分的にモチーフを使っています。
序盤の音はカリンバを演奏した音をゆっくりとした音に加工した音で、浮遊感があります。ビートのように聴こえる音は、サックスのマウスピースとリードの間で発生させた微小なノイズを管体で変調させた音を使っています。
全体的に静かでゆったりとした、けれども少し暗い雰囲気の、寒い国の心象風景のような音になっています。ぼんやりとした意識のなかで、途切れ途切れに聴こえる音の断片の中に浮遊する感覚を楽しんで頂けたらと思います。
06 : daydreaming
収録された音源の中では一番古い録音で、僕がsoloでのライブ活動を開始して間もない2004年に札幌のspiritual loungeで演奏した音の録音です。非常にチープな録音機材で録ったもので録音状態は非常に悪いのですが、とても瑞々しい演奏が切り取られていたので採用させてもらいました。
この曲はエレクトリックベースとループループサンプラーとラップトップで演奏されたもので、演奏した音を不自然な音の長さで切り取り加工することで、浮遊感のある音像を醸しています。演奏も下手で荒削りながら、今では決して演奏できない美しさがあると思っています。